誘いは静かに

今回は将棋クエストの自戦記です。相手はレート1900台の方。テーマは「誘発」。直接攻撃だけが攻撃する手段ではありません。



      【図は△5四歩まで】
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戦形は相手の四間飛車に対して僕の居飛穴。完全な陣形ができたので後はどう戦いを起こすか、というところです(実はここで▲4八飛△4二飛▲2四歩△同歩▲2五歩の仕掛けがあったのですが、本譜では見逃しました)。

さて、ここで僕は▲8六角と揺さぶりをかけました(放置すると▲6五歩)。以下△8五歩▲7七角△9二香…とお互い様子見が続きます。相手も慎重でなかなか動いてくれません。

      【図は△8四銀まで】
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△8四銀。やや痺れを切らしたようです。以下▲5七角△8三玉となりましたが、相手の玉形は飛車に弱くなり、この交換はこちらの得と見ています。

ここで僕は好機と見て▲2四歩と仕掛けます。以下△同歩(同角は角交換後に▲4三歩)▲2二歩△1三桂▲2一歩成と進んで下図。


      【図は▲2一歩成まで】
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次に▲2二とがあるので相手は動かざるを得ません。実は▲2四歩からの仕掛けは、「動く」というよりも「動いてもらう」ためのものでした。

以下△5五歩と進み、ベストな状態で戦える展開に。


      【図は▲7三金まで】
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投了図。実は3手詰めを逃したりとかなり反省点がありましたが、何とかまとめることができました。





☆総括、および「誘発」について


本局では上手くいきましたが、相手を動かすことができると、その力を利用することができるため堅陣が活きやすいです。


穴熊のような堅陣は、相手から動いてもらうことで真価を発揮できます。居飛車穴熊(特に四枚の)を指す上で重要な意識は、「動く」ことよりも「動かす」ことです。


では、「動かす」あるいは「動いてもらう」ためにはどうすればよいか。それには、確実でなくても良いので、圧力をかけることです。


圧力とは例えば(本譜のように)角を覗いたり、垂れ歩など嫌な手を見せたり、さらに玉を堅める事を目指したり、などが挙げられます。


成果が「確実」である必要はありません。つまり、格ゲーの2択3択のように、正確に対応されると何でもないが対応を誤るとダメージを与える、というような手で良いのです。


嫌な手を「見せる」、すなわち「揺さぶる」だけでも効果があります。なぜか?


「正確に対応されると0」でも「対応を誤ると+1」の手を指し続ければ、すなわちリスクを与え続ければ、いつか相手は対応を誤ることが期待できるからです。これが「揺さぶり」の基本原理です。


たとえ一度では動いてくれなくても、2度、3度…と圧力をかけ、揺さぶれば、いつかは必ず動いてくれます(そしてこの相手を動かす、あるいはミスを誘う一連の流れが「誘発」です)。

だから、「誘発」は決してギャンブルや相手のミスに期待した愚策ではなく、確実性のあるれっきとした技術なのです。


まあコンピューターには通じませんが、相手の心理も利用し、「ほぼ一方的にリスクを与える」感覚が身になれば、世界が変わることでしょう。



とりあえず以上です。前回の自戦記が凄惨な内容だったので、今回は成功例を取り上げました。ではまた。